曲前半はひたすら抑えたトーンですが、「想い出と戯れる　歌を唄うように」を境に大きく翼を広げるサウンド。　矢野さんの音譜とともに身体がふわっと浮かび上がるような錯覚にとらわれます。

　矢野さんの曲を追いかけずにはいられない理由は、多分、いつもこんな不思議で幸せな体験をさせてくれるからなのでしょうね。

　ストリングスは脇役として歌を飾ることが多いですが、今回は間違いなく主役です！！

　そして「ミモザの黄色　目を閉じれば」で、草原へ駆け出すかのように見えるストリングスが、次の瞬間、さっと視界から消えていくとは！！ 　何と粋な演出なのでしょう。

　「夏に私が初めてあなたに」で再登場すると、今度は、メロディの上で美しく舞い始めます。　「ほんとは弱い女なのよ」以後、前半ラストに向けて一気に花開き、高らかに歌うストリングスは美の極致とも言えますね。

　印象的な燦めきのイントロで始まる「時代遅れの女になりたい」。　初めて聴いた瞬間から「うわぁ素敵なサウンド！！」と、一目惚れしてしまった歌です。

　バックで時折リズムを刻むギターも効果的。　心地よく流れていくアレンジが、親しみやすい雰囲気作りに貢献していますね。

　「やさしい時間」直後、キュンと鳴る一瞬のストリングスがチャーミング。

　「待つことさえ　やさしい時間」から、呼吸を置かず「長い爪も　短くしたわ」へと移るメロディの隙間に割り入って、さらに一瞬の息継ぎさえも封じ込めてしまいそうなアレンジ技が心憎いですね。

　最後のリピート「一途な想い　隠せない」から入る小刻みなエレキ・ギターのアクセントも素敵です。

　この歌は、新作アルバム「シルエット」の中にあって、チェウニの新しい方向性に期待を抱かせる曲でもあります。

　鑑賞用カラオケ（インスト曲として聴きたくなるカラオケ）の第一条件は、伴奏自体が独立したメロディを持っていること。　そして、主旋律とかけ合わせることで、歌の魅力が何倍にも感じられるものであること。

　歌の隙間を掻い潜って聴こえてくる伴奏を追いかけるのは、ちょっとスリリングでもありますが、カラオケは、やはり楽器の音がクリアな点が魅力です。

　曲全体に流れる「シャン、シャン、シャン、シャン」という鈴のような音、カラオケだと尚更余韻があって素敵です。　星がキラリと光るようなトライアングルも印象的。　コーダ部分直前のガラス細工みたいな「キラ、キラ、シャラ、シャラ」というサウンドもお気に入りです。

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