このＬＰ、矢野さんの初作曲作品と思われる音楽が収録された記念すべきアルバムなのです。　1973年がプロとしての初仕事で、これは２年目の作品ですが、豊かな才能の萌芽が認められます。

ＬＰのＢＧＭ作曲と歌曲編曲のアルバムということで、映像音楽とも作曲歌曲とも違いますが、今回の復刻を記念して、「この歌を聴かせたい！」コーナーに入れることにしました。

復刻版ＣＤなので、プラスチックケースと通常のブックレットを想像していたのですが、何と紙ジャケで、細部に至るまでＬＰと同一仕様になっています。　あの大きな、ＬＰジャケ全体を包み込むような三つ折り歌詞カードもそのままで、これにはかなり感激しました。

歌詞カードとジャケットの梶芽衣子、本当に美しいです。　中でも、歌詞カードの最終ページ一面を使った梶芽衣子のモノクロ写真が一番好き。　これ、ＬＰだと結構大きな写真で、思わず息を呑むほど魅力的です。

　１分程度の短いインスト曲ばかりですが、どれも非常に美しいメロディです。　「新しい日々」以外は台詞は入りで、映像はないものの、耳で聴く限りでは劇伴音楽そのもの。　つまり、ここに矢野映像音楽のルーツがあったわけですね。

特に「元気よ」は、弦の使い方がカラフルで、メロディそのものに物語性が感じられます。　曲の中盤、ピアノとストリングスによるサウンドの広がりが素晴らしいですね。　レコードを感動的に締め括るに相応しい音楽です。

　イントロの前に、雨音と台詞入りのオルゴール音インスト曲が挿入されています。 とても綺麗で繊細で心安らぐメロディに、思わず聴き惚れてしまいます。 このオルゴール音、曲が終わった後にも入ってます。

作曲はかまやつひろし。 かまやつひろしというと、フォーク・ソングのイメージが強いのですが、これは極めて歌謡曲的。　「好きだけど　とても好きだけど　さよならをつぶやく」パートのメロディがいいですね。　ストリングスの入れ方も素敵。　アクセントとして使われているハープも印象的です。

「この新しい朝に／雨の夜あなたは」はシングルで出ています。（TEICHIKU、SN-1426）　ＥＰを店頭で見かけたとき、確か、収録時間がＬＰより短かかった記憶があります。　ＬＰヴァージョンは５分50秒。　もしかして、ＥＰは、歌前後の「雨音入りインスト・パート」がカットされているのでは？　情報をお持ちの方、是非教えてくださいね。

　イントロも楽器もなく、さり気なく口ずさむような調子で歌が始まります。　「雨は　こぬか雨が　好きよ」以後、オルゴール音が入り、少し経ってギター、次にコンガ、そしてチェロ入る……といった具合に少しずつ楽器が加わっていきます。　初めて聴いたとき、何て素敵なアレンジなんだろうと思いました。　極めてシンプルなのに、心に深く食い込むようなアレンジ。　本当に不思議な魅力に包まれた歌です。　

優しさの感じられる梶芽衣子の歌声も好き。　間奏以後、異国的な響きのチェロとフォークギターにも心惹かれます。　曲のラストに残るコンガが、次の曲「旅」にそのまま流れ込んでいくところもいいですね。

この曲、どれほどＣＤで聴きたかったことか……　アルバムで一番のお気に入りでした。　本当に待った甲斐がありました。

★　秋　★

　フォーク調の歌。　フォーク・ギターとエレピアノがとても印象的です。

　矢野作品以外での注目曲は「この新しい朝に」。　お洒落で素敵なメロディです。　「舟にゆられて」とともにアレンジは青木望さん。　どちらも「さすが矢野さんのお師匠さん！」という素晴らしいアレンジです。　そして梶芽衣子の歌声がとてもいい感じ。

　　　【ＬＰ】　TEICHIKU RECORDS　　発売年：1974年　　レコード番号：CF-58

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